現代にマッチする扱いやすいスポーツカーを目指した「スバル BRZ」、その性能は?

BRZは2012年から販売されているスポーツカーで、トヨタと共同開発されたモデルです。開発の際の費用は折り半であり、開発する際の技術面でもトヨタとスバル両社の技術がバランスよく生かされています。スバルの車ですが、半分トヨタの車とも言えるモデルです。

車名は「Boxer Engine」、「Rear wheel drive」、「Zenith」の頭文字が付けられています。直訳すると水平対向エンジン、後輪駆動、究極、という意味になっています。開発のテーマとして「Built by passion,not by Committee!」(合意してつくるのではない、情熱によってつくられるのだ!)を掲げて、製作に臨みました。

というのもトヨタは元々役員や営業、工場など様々な部門から承認を得て製造していく車内評価制度の元に今まで車が開発されてきましたが、このBRZの場合は86の立案者であり開発責任者である多田哲哉氏直接豊田章男氏にアイデアや要望を出して、社員のスポーツカーユーザーだった約200名の意見を聞きながら開発していったという今までにない経緯を経て開発されました。

特にその特徴はエクステリアに顕著に反映されており、低重心がより強調されているところや、キーンルックと呼ばれる知的で明晰な印象を与えるフロントマスクは今回の手法だからこそ生まれた点だと言われています。

共同開発で生まれているモデルは多々ありますが、BRZは強い熱意がこめられており、揉める時は揉めてその上で良いものを目指していき完成しました。

そんなBRZとはどういう車なのか、性能だけではなくその開発に秘められた裏側のストーリーも覗いていけたらと思います。

兄弟車はあの86


出典元:ウィキメディア

実はBRZの兄弟車はあの86であり、ほとんど仕様的には同じものとなっています。全体のデザインや車両コンセプト、企画策定、パッケージングなどはトヨタが担当しており、設計と確認作業はスバル側が行いましたが、あくまで両社が平等に開発を進めていき生まれたモデルでした。

というのもちょうどこのBRZの開発が始まった時期はトヨタとスバルが資本提携を結んだ時期で、BRZはその具体的な存在としてうってつけだったわけです。とはいえ両社の考えや技術をすり合わせていくのも大変なことでした。

多田氏は水平対向エンジンを用いてスタイリングと走りと両方良くしていこうと考えていましたが、スバルとしては抵抗がありました。スバルは四輪駆動とターボに特化しているのでそれらを採用しないのは受け入れ難い姿勢を見せていました。

そこでエクステリアはレガシィのままFRの水平対向4気筒エンジンを使用した試作車が作られ、スバル側の開発陣らが運転したところ思いのほか楽しめたことからGOサインがおりました。

今だからこそ生まれたスポーツカー


出典元:ウィキメディア

現在でもスポーツカーがかっこいいという認識はもちろんありますが、やはり80年代後半から90年代前半、バブル期付近にかけて流行ったようにスポーツカーやクーペを当たり前のように所有することはなくなりました。

現在はクロスオーバーSUVや軽自動車が主流となっており、スポーツカーの販売台数は芳しくないのが事実です。それに拍車をかけて若者の車離れも進んでいることについて、トヨタでは安価なスポーツカーを開発することでスポーツカー&若者の車離れに一石を投じようとしたのです。

それだけにこだわり抜いて開発をされています。多田氏は日本のみならず世界まで飛び回りスポーツカー好きな方々や業者などの話を聞いてまわり、現代に求められているかっこいいスポーツカーというものを忠実に形にしようと研究しました。

そして結果として見えてきたのは、「安い」「速くなくていい」「運転しやすい」「かっこいい」という条件を兼ね備えている車が今求められているということでした。まず「安い」ですが、一番安いRモデルで2,678,400円となっており、比較的購入しやすい値段となっています。

そして「速くなくていい」という点において多田氏は以前トヨタで販売されていたAE86「カローラレビン・スプリンタートレノ」のような車が求められていると気付きました。速さとスポーツ的であるというのは必ずしも両刀であるわけではなく、今回このBRZに必要だったのは遅いけどスポーツ的であるということでした。

それは「運転しやすい」という部分に繋がっていることでもあります。その点はFRで排気量2,000ccにすることで実現させました。そして「かっこいい」ということ、多田氏はシンプルにかっこいい車=低い車であると考えました。

しかし本来FRで車体を低くすることはエンジンの形状的に難しく、多田氏は悩みに悩みましたが水平対向エンジンを用いることでFRでも低い車体にすることに成功しました。本当は低くするのであれば、MRが妥当ですがそうなると「運転しやすい」車にはならないので、あくまで多田氏はFRにこだわりました。

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多種多彩なグレード

BRZはそれぞれの用途に合うよう様々なグレードが用意されています。一番標準仕様なのが「R」、6速MTか6速ATから選べます。標準とはいっても「17インチパフォーマンスパッケージ」と「スポーツインテリアパッケージ」の2オプションはRのみに設定されています。

その次に「R Customize Package」というRからスピーカーやアルミホイールなどが省いたグレードとなっています。6速MTと6速ATから選択できるのはRと同じです。「S」が上級仕様となっており、6速MTとパドルシフト付き6速ATから選べます。こちらもまだS唯一のオプションである「レザー&アルカンターラパッケージ」があります。

その次は本格的なスポーツモデルである「GT」があります。GTは走りにこだわる人にも楽しんでいただけるモデルです。ベースはSですがブレンボ製17インチベンチレーテッドディスクブレーキ、17インチアルミホイール、ZF社製SACHSダンパー、リアスポイラー、BRZロゴをあしらったアルカンターラ、本革シートが追加されている仕様になっています。

走りももちろんですが乗っていてラグジュアリーさが感じられるようにもなっています。

そして最上級モデルとして「STI Sport」と競技用の「RA Racing」もあります。

86との違い

やはりこの話の流れだと気になるのは86とどれだけ違うのかという点だと思います。

まずエンジンや基本的なメカニックの部分においては同じです。しかしながらやはり両社でこだわりや特性を出しており、よく言われるのが86はドリフト向きでリアが良い意味で滑りやすくなっていますが、BRZは安定性が重視されています。どちらが良い悪いとかではなく、好みに応じて選べるというのは一つのメリットでしょう。

主に両車の違いはエクステリアにあり、フロントグリルが上方に向かって広がっているのがBRZ、下方に向かって広がっているのが86です。このフロントグリルの違いがまず一番分かりやすい部分かと思います。

その次にフォグランプの形状が違いになります。BRZの方がひし形で大きく、86は三角形で小さいです。そしてカラーではスバルでお馴染みのWRブルー・マイカとラピスブルー・パールがBRZのみに設定されており、スバルらしい美しい青色が選べるのはBRZの特権です。

その他は内装やオプションにわずかな違いがあったり、BRZではモータースポーツベースグレードでHIDヘッドランプとタコメーターの中にあるデジタルスピードメーターが全グレードで標準装備されていることなどが挙げられます。

まとめ

どうしても86との比較の話が多くなってしまいましたが、BRZを語る上で86が欠かせないのもまた事実です。お互い両社を高め合い、両社の技術の結晶となったモデルと言っても過言ではありません。

そして今利便性が重視されているなかで、改めてやっぱりスポーツカーはいいなと思わせてくれる一台でしょう。

[ライター/A. Oku]