実はスバルで最もロングランを誇っている長寿車種、「サンバー」の華麗なる歴史をたどってみる

1958年、スバル360(てんとう虫)で始まったスバルの軽自動車製造の歴史は、2012年にサンバーで幕を閉じました。しかしその後もサンバーの名前は、ダイハツ・ハイゼットのOEMとして、現在も続いています。

スバルの草創期から現在まで、半世紀を優に越える長い間にわたって続くサンバーは、まさにスバルを代表する車種といえるでしょう。今回はそのサンバーの歴史をたどってみたいと思います。

一目置かれた、サンバー独特の構造と高い走行性能

1961年に生まれたサンバーは、2012年に自社生産が終了するまでの間、一貫してリアエンジンレイアウトを採用していました。これはたとえばトラックタイプでは空荷の際にリアに荷重がかかるなど、トラクション面で有利でした。

さらに1961年のデビュー当初から四輪独立懸架を採用していました。当時としては乗用車でもなかなか採用できなかった贅沢な足回りです。これらの構成からもたらされる走行性能の高さから、一部では「農道のポルシェ」と呼ばれていました。

また1980年にはサンバーに四輪駆動がオプション設定されました。今日、日本の狭い農道や林道などでは四輪駆動の軽トラックが最強の道具として活躍していますが、自動車メーカー各社で製造されているそれらの元祖はスバル・サンバーだったのです。

ちなみに「サンバー」とは、インドなどに生息する鹿の一種(水鹿)からとられた名前です。

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50年以上にも及ぶモデルチェンジの変遷

長い歴史の中で、サンバーは数々のモデルチェンジを経てきました。現行モデルのサンバーは、初代から数えて七代目です。


出典元:ウィキメディア

初代サンバーは1961年から1966年まで製造されました。1958年のスバル360のデビュー直後から開発は始まり、1960年の東京モーターショーで発表されました。サンバーの特徴であるリアエンジンレイアウトは、このスバル360を踏襲してごく自然に決まったのかもしれません。

足回りもトーションバースプリングを利用したトレーリングアーム式サスペンションで、四輪独立懸架の恩恵で乗り心地がよく、また荷台の荷物が壊れないという評判でした。

360ccのEK31型空冷並列2気筒2ストロークエンジンは18ps/4700rpm、3.2kgm/3200rpmで、現在の基準からすれば非力ですが、当時の道路事情では十分な性能だったと思われます。

あごを突き出したようなかわいらしいボディラインが特徴で、人間の顔にたとえて「クチビルサンバー」などと呼ばれていました。
なお、ドアは後ろにヒンジがあって前側が開くタイプが採用されています。

キャブオーバータイプの軽自動車としてかなり初期のもので、その後いまに繋がる軽トラックの流れを作ったと言えるでしょう。
トラックタイプとワンボックスタイプが用意されていました。


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二代目サンバーは1966年から1973年まで製造されました。ニューサンバーと呼ばれたモデルで、顔つきがやや現代的になっています。エンジンの形式は変わりませんが、1970年のマイナーチェンジでリードバルブ付きになり、25ps/5500rpm、3.5kg/4500rpmにパワーアップしました。またこの時からドアが前ヒンジで後ろ開きの一般的なタイプになっています。ダミーグリルが装備され、「ババーンサンバー」と呼ばれました。

トランスミッションは変わらず3速MTですが、オーバードライブ付きの4速や副変速機付きの前進6速/後進2速というようなオプションも用意されていたようです。

モデルの終わりに近い1972年のマイナーチェンジでダミーグリルが大型になり、ちょっとくせの強い顔つきで「ストロングサンバー」と呼ばれるようになりました。


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三代目サンバーは1973年から1982年まで製造されました。それまでの空冷エンジンからEK34型水冷2サイクルエンジンになり、「剛力サンバー」と呼ばれました。この年からテールのウインカーがブレーキランプから分離、ちゃんとオレンジになります。

1976年2月、エンジンが水冷2気筒SOHCのEK21型4サイクルになりました。さらに5月には500ccのEK22型になり、「サンバー5」に。そして1977年、550ccのEK23型エンジンを積むと同時にサイズアップして、軽自動車の新規格に完全に対応しました。

1980年からは四輪駆動モデルも設定され、農業や林業関係者の足として活躍するようになります。


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四代目サンバーは1982年9月にデビュー、1990年まで製造されました。このバージョンからワンボックスタイプが「サンバートライ」という独立したモデルになりました。この頃のサンバーは、国内向け国産車として最後の直列二気筒エンジン搭載車でした。
1987年のマイナーチェンジから、サンバートライの一部グレードが「サンバーバン」として独立しました。RV志向のトライと商用車志向のバンという棲み分けです。サンバートライとトラックの上位モデルには3バルブエンジンも新たに設定され、28ps/5500rpm、4.3kgm/5500rpmから34ps/6000rpm、4.4kgm/4500rpmにパワーアップしました。
この四代目サンバーの派生モデルとして、1983年には1000ccエンジンを搭載したスバルドミンゴが作られています。


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五代目サンバーは1990年から1999年にかけて製造されました。軽自動車の新規格に対応してエンジンは660ccの水冷直列四気筒になり、NAのEN07C型は40ps/6500rpm、5.5kgm/3500rpm、スーパーチャージャー付きのEN07Y型は55ps/6200rpm、7.1kgm/3800rpmを発生します。初期の18psから考えるとものすごいハイパワーです。

さらにフロントにはベンチレーテッド式のディスクブレーキが採用され、トランスミッションは5速になりました。そしてこのバージョンからからATとして、電磁クラッチにECVTを組み合わせた無段変速装置を搭載したモデルが登場しました。

ECVTはスバルがオランダのVDT社と共同開発した無段変速ミッションで、原理としてはスクーターなどに搭載されているVベルト式の無段変速装置と同じです。ただし四輪車の車重とパワーに耐えるためにゴムベルトではなく連結された金属のベルトを使用し、スクーターのように「ベルトを引っ張る力」で駆動するのではなく「ベルトを押す力」で動力を伝える仕組みになっています。

ただし、この時代の電磁クラッチにはまだまだ改良すべき点も多く、積み荷が多く負担がかかりがちな貨物用途ではトラブルが問題になり、1995年以降これらの車種では一般的なトルクコンバーター式3速ATに変更されました。またこの年からNAエンジンがEN07F型になり、出力は46ps/6400rpm、5.6kgm/4600rpmとなっています。

サンバートライの上位機種としてディアスが登場し、さらにはレトロな外装のディアスクラシックも設定されました。
この時代はちょうどバブル経済の後期と重なり、機関にしても外装にしても様々な改良にお金がかけられたのでしょう。五代目は各種変更、改良と動きの大きなモデルになりました。


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六代目サンバーは、1999年から2012年にかけて製造されました。スバルで生産された最後のモデルです。1998年度の軽自動車の規格変更に合わせて、ボディが大きくなりました。この規格変更は主に軽自動車の衝突安全対策のためだったので、各社一斉にクラッシャブルゾーン確保のためセミキャブ化されましたが、サンバーはトラック、ワンボックス共にフルキャブのスタイルを維持しました。

エンジンの形式はEN07Cが廃止、EN07FとEN07Yは変更なしですが、それぞれ48ps/6400rpm、5.9kgm/3200rpmと、58ps/6000rpm、7.5kgm/4400rpmにパワーアップしています。

2012年2月28日に生産を終了、奇しくも50年の節目に自社生産のサンバーが終了すると共に、スバルは軽自動車の製造を終えたのでした。
リアエンジンのサンバーを惜しむ声は多く、生産終了を知って駆け込みで購入した人も多かったようです。


出典元:ウィキメディア

七代目サンバーは、2012年から現在まで生産されています。製造はダイハツで、ハイゼット及びハイゼットトラックをベースにマークやエンブレムを変更してサンバーとして販売されています。

これはいわゆるモデルチェンジではなく、名前こそ同じですが全く別の車種なので、当然変更箇所は多岐にわたり、詳細を書くと大変なので割愛させていただきます。またトラックはその後2014年にさらにマイナーチェンジがあり、サンバーとしては八代目になりました。

スバルとともに歩んできたサンバー。その過程には他にEVモデル、赤帽専用車、農協専売の「JAサンバートラック」など、様々な派生モデルもありました。

現在、何代目のサンバーが購入できる?

以上、1961年から現在に至るスバルサンバーの、半世紀以上にわたる歴史をざっと振り返ってみました。

スバルサンバーは現在も継続するモデルですので、七代目以降は新車で買うことが出来ます。ただしリアエンジンのサンバーが欲しい、という場合には当然中古車を探すしかありません。

元々個体数の多い実用的な軽自動車ですから、中古車市場に出回っている数は多いです。ただし道具として乗りつぶされることの多いカテゴリーのクルマで、新しいうちにどんどん乗り換えて、という車種ではないので、年式が古めでそれなりに多走行、値段は安め、というものが多いようです。維持費の面で有利な軽自動車は年式が古くても一応値段が付く、という事情はサンバーにも当てはまります。

ただ、サンバーの特別な事情としては、リアエンジンモデルの生産終了のアナウンス以降、ファンによる駆け込み購入が少なからずあった、ということがあります。商用に使うというより、クルマそのものの機構が好きで一度乗ってみたかった、という人たちです。それらの一部が手放されることもあるようです。

なので、六代目に関しては、比較的ハードに扱われていない高年式の程度のいい中古車が出回ることがあります。もちろん、それなりに値段は高いですが。リアエンジン・四輪独立懸架の軽トラックやワンボックスを味わってみたい、ということであれば、探してみるといいでしょう。

また、三代目以前の360ccの時代のものに関しては、さすがにほとんど出てきません。実用車ですから、ほぼ乗りつぶされてしまっていると考えていいでしょう。もし万一程度のいいものが出てくれば、それはビンテージ好きのマニアの間で高値で取引されるのではないでしょうか。

スポーツカーや高級セダンなどに比べて、軽のワンボックスや軽トラックは実用的な道具の色合いが強く、メーカーごとの個性や特色が見えにくいカテゴリーですが、それでもきちっと独自の機構や機軸を打ち出してくるところに、スバルという会社の面白さがあるように感じます。

[ライター/小嶋享]